焼け河原 Ⅱ
野木京子
流れが止まり 光は腐り始めた
捩じれた濁音の滴は 境界を落ちた
わたしは鈍いのです そして変形した奇妙な生を生き延びた
くりこ、くりこ、……
(そんな名前の子はいないよ)
握り締められているこぶしをゆっくり開いてやる
聞こえない囁きが背後から吐く息が 皮膚をさする
死んだ人が履いていた革靴ね
緑や黄やオレンジや紫色の 茶色や黒の。
ある朝カーテンを開けると 海に浮かんだ空に
そんなものがたくさん天を歩行していた
死んだ人たちの靴が 行き場を失って歩行を続けていた
火がつく少し前のこと