室町パッケージ
野村喜和夫
(fold out)
よろこべ
午后も
脳だ
さよなら固有名
水葬のように
沈められた顔
さよなら意味という冬
泡立つ
恍惚の虫
たくさんの無人
ねっとりと寿がれた海の
裏の向日葵に
青い闇の渦巻が降るだろう
きびきびと
時間のように
(fold in 1)
よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/人には馴れまじものぢや/裏の向
日葵に/水葬のように/恍惚の虫/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさ
んの無人
(fold in 2)
よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/水葬のように/ねっとりと寿がれ
た海の/裏の向日葵に/沈められた顔/という冬/馴れての後に/青い闇の渦
巻が降るだろう
(fold in 3)
よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/裏の向日葵に/離るる/沈められ
た顔/さよなら意味という冬/泡立つ/恍惚の虫/たくさんの無人
(fold in 4)
よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/ねっとりと/裏の向日葵に/さよ
なら意味という冬/寿がれた海の/るるるるるるが/沈められた顔/青い闇の
渦巻が降るだろう
(fold in 5)
きびきびと/時間のように/脳だ/大事ぢやもの/さよなら固有名/裏の向日
葵に/水葬のように/恍惚の虫/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさん
の無人
(fold in 6)
きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/大事ぢやもの/水葬のよ
うに/ねっとりと寿がれた海の/裏の向日葵に/青い/沈められた顔/という
冬/闇の渦巻が降るだろう
(fold in 7)
きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/裏の向日葵に/さよなら
意味/恍惚の虫/るるるるるるが/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさ
んの無人
(fold in 8)
きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/沈められた顔/さよなら
意味という冬/離るる/ねっとりと寿がれた海の/裏の向日葵に/青い闇の渦
巻が降るだろう
(fold in 9)
よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/水葬のように/馴れての後に/恍
惚の虫/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさんの無人
(fold in 10)
よろこべ/水葬のように/沈められた顔/という冬/午后も/脳だ/寿がれた
海の/青い/人には馴れまじものぢや/さよなら固有名/闇の渦巻が降るだろ
う
(fold in 11)
よろこべ/沈められた顔/さよなら意味という冬/人には馴れまじものぢや/
午后も/脳だ/泡立つ/恍惚の虫/さよなら固有名/たくさんの無人
(fold in 12)
よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/沈められた顔/さよなら意味とい
う冬/馴れての後に/寿がれた海の/青い闇の渦巻が降るだろう
(fold in 13)
きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/離るる/水葬のように/
沈められた顔/という冬/泡立つ/恍惚の虫/たくさんの無人
(fold in 14)
きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/水葬のように/寿がれた
海の/青い闇の/るるるるるるが/沈められた顔/という冬/渦巻が降るだろ
う
(fold in 15)
きびきびと/沈められた顔/さよなら意味という冬/時間のように/脳だ/泡
立つ/恍惚の虫/大事ぢやもの/さよなら固有名/たくさんの無人
(fold in 16)
きびきびと/時間のように/沈められた顔/さよなら意味という冬/大事ぢや
もの/脳だ/寿がれた海の/さよなら固有名/青い闇の渦巻が降るだろう
詩誌情報
坂
斎藤恵子
坂みちが柚子色に発光している
金色の輪をまわしながら
子どもが一人下りてくる
長い睫毛に涙が溜まってこぼれ
なめした白皮の皮膚を弾きながら
淡紅の口の端へとゆく
子どもは細紐を操るように
空中へと長い舌を泳がせ舐め戻した
ふいに
せらせらせら
笑った
わたしが見ているのに気づかないようだ
夜が近くなっている
家家の窓が蜂蜜色になる
蛍光灯の下で
宿題をすませた妹たちが
ゲームを始める
わたしは何か忘れている
哀しいような可笑しいような
でも
忘れたままでいなければならない
ちいさな子がドアを叩く音がする
血の匂いのする赤いゆびをしゃぶり
むらさき色のしおれた花を
ドア横において
水路のほとりで溶けていく
せらせらせら
流れる水音が草をよじる
笑い声がどこからか聴こえる