今月の推薦作品1001




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詩誌の情報と販売サイト 44プロジェクト Last Updated 2012-05-25

エウメニデス36号.jpg

室町パッケージ
野村喜和夫



(fold out)

よろこべ

午后も

脳だ

さよなら固有名

水葬のように

沈められた顔

さよなら意味という冬

泡立つ

恍惚の虫

たくさんの無人

ねっとりと寿がれた海の

裏の向日葵に

青い闇の渦巻が降るだろう

きびきびと

時間のように

(fold in 1)

よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/人には馴れまじものぢや/裏の向

日葵に/水葬のように/恍惚の虫/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさ

んの無人

(fold in 2)

よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/水葬のように/ねっとりと寿がれ

た海の/裏の向日葵に/沈められた顔/という冬/馴れての後に/青い闇の渦

巻が降るだろう

(fold in 3)

よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/裏の向日葵に/離るる/沈められ

た顔/さよなら意味という冬/泡立つ/恍惚の虫/たくさんの無人

(fold in 4)

よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/ねっとりと/裏の向日葵に/さよ

なら意味という冬/寿がれた海の/るるるるるるが/沈められた顔/青い闇の

渦巻が降るだろう

(fold in 5)

きびきびと/時間のように/脳だ/大事ぢやもの/さよなら固有名/裏の向日

葵に/水葬のように/恍惚の虫/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさん

の無人

(fold in 6)

きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/大事ぢやもの/水葬のよ

うに/ねっとりと寿がれた海の/裏の向日葵に/青い/沈められた顔/という

冬/闇の渦巻が降るだろう

(fold in 7)

きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/裏の向日葵に/さよなら

意味/恍惚の虫/るるるるるるが/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさ

んの無人

(fold in 8)

きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/沈められた顔/さよなら

意味という冬/離るる/ねっとりと寿がれた海の/裏の向日葵に/青い闇の渦

巻が降るだろう

(fold in 9)

よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/水葬のように/馴れての後に/恍

惚の虫/沈められた顔/という冬/泡立つ/たくさんの無人

(fold in 10)

よろこべ/水葬のように/沈められた顔/という冬/午后も/脳だ/寿がれた

海の/青い/人には馴れまじものぢや/さよなら固有名/闇の渦巻が降るだろ



(fold in 11)

よろこべ/沈められた顔/さよなら意味という冬/人には馴れまじものぢや/

午后も/脳だ/泡立つ/恍惚の虫/さよなら固有名/たくさんの無人

(fold in 12)

よろこべ/午后も/脳だ/さよなら固有名/沈められた顔/さよなら意味とい

う冬/馴れての後に/寿がれた海の/青い闇の渦巻が降るだろう

(fold in 13)

きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/離るる/水葬のように/

沈められた顔/という冬/泡立つ/恍惚の虫/たくさんの無人

(fold in 14)

きびきびと/時間のように/脳だ/さよなら固有名/水葬のように/寿がれた

海の/青い闇の/るるるるるるが/沈められた顔/という冬/渦巻が降るだろ



(fold in 15)

きびきびと/沈められた顔/さよなら意味という冬/時間のように/脳だ/泡

立つ/恍惚の虫/大事ぢやもの/さよなら固有名/たくさんの無人

(fold in 16)

きびきびと/時間のように/沈められた顔/さよなら意味という冬/大事ぢや

もの/脳だ/寿がれた海の/さよなら固有名/青い闇の渦巻が降るだろう

詩誌情報

「エウメニデス」36号より抜粋




「どぅるかまら」7号.jpg


斎藤恵子


坂みちが柚子色に発光している
金色の輪をまわしながら
子どもが一人下りてくる
長い睫毛に涙が溜まってこぼれ
なめした白皮の皮膚を弾きながら
淡紅の口の端へとゆく

子どもは細紐を操るように
空中へと長い舌を泳がせ舐め戻した
ふいに
   せらせらせら
笑った
わたしが見ているのに気づかないようだ

夜が近くなっている
家家の窓が蜂蜜色になる
蛍光灯の下で
宿題をすませた妹たちが
ゲームを始める

わたしは何か忘れている
哀しいような可笑しいような
でも
忘れたままでいなければならない

ちいさな子がドアを叩く音がする
血の匂いのする赤いゆびをしゃぶり
むらさき色のしおれた花を
ドア横において

水路のほとりで溶けていく
せらせらせら
流れる水音が草をよじる
笑い声がどこからか聴こえる


詩誌情報

「どぅるかまら」7号より抜粋




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