今月の推薦作品1003




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酒乱4号.jpg

河内 
高塚謙太郎


彼方を登りつめ
羽織るものの明け暮れに
河内の祝言
ぞはためけはためけやをらやほらしうげん
花嫁参上
背面ぞいに花婿にじりさわり
高砂 高砂

高砂で酔いに任せ、大日を知るとその股は出入り野放になる、という言葉のように広司が花嫁を殴打した一年後、舅は卒倒した。最後の呻言は、その股の顔すなわち土器の女体から滴る静けさ、であった。そして広司は乳呑児を抱いた独り者である。産み落とすと花嫁は夫も残し、大日になった。そのころ文書を通してしか二人の繋がりはなくなっていた。舅の葬儀で乳呑児を抱えた広司を久しぶりに見た花嫁は、その夜新しい赤子を宿すことになる。つまり広司の嫡子である。乳呑児はぬるく黒ずんだ眸で父親の遺影を見入っていた、と花嫁は枕で呟いた。大日に寄るのは法度、広司の話はこれだけだ。

背の河を愛撫して
「天の河
いずれかがいずれかをとらえ
阿婆擦れて
いずれかがいずれかをたおす
「暮れなずむ河川敷で天の河を夢みた
「あの美しかった天の河はもうない
ビーチバレーに誘ってみようか
背の河とは天の河
天の河は河内へとは注ぎ込まない
「注ぎ込みたかった
天の河はどこを流れているのでしょう
花婿の犬のそこにね
花嫁のそこのところに逆流したりしてね
命果てるまで

大和河河川敷に集まる犬を連れた不能、を引用する。夕陽に向かって背を向けた犬と主人、その主人は花嫁、に不能をなぞらえる、そういう集いに多くが煙草でもふかしながら各々のベンチを占拠、その法制に取りかかる卒倒気味の、高砂、高砂、土器の女体の口にそのときの乳呑児が声を高らかに。歴一年の二人が春先夫婦となる、春先夫婦の土器を河川敷にて発掘、土饅頭から、以上引用終わり。

  ビーチバレー河内に咲く日取り吉日
                (それより紀元)

河川敷での市職員によるゲートボール大会は活況、その陰で河川敷を締め出された花婿たち犬たちは静かに転がるボールの行方を追うしかなかったのです。ゲートボールではない、ビーチバレーだ、しかしボールは一度として宙を舞うこともなく、ひたすら草地を転々と、花嫁は背面で第1ゲートを通過。

花婿は濡れそぼり

巌も砕く花嫁は入城しました。そこには、海、海、海。河内は淀河に捲れ込んでいるのですね。それは濡れた河ですね。花嫁は今夜も出奔します。高砂、高砂。城下に広がる下々の下の世話を買ってでた花婿と犬、今日も大和河河川敷の草に各々の脚を沈め、よく肩を並べ河面の入り日を眺めたものです。

花嫁は凪ぎ暮れて

花嫁に私の高砂を穢すなと囁かれた康太は夜匂う女体に忍び込み、自らは高砂をも持たず遁走した。まず人相にそれがきた。以前から康太は女体の腐れの匂いを吹聴して回っていた。悪い風邪の乾いた舌に絡まる飲料の方がましだ、臭ぇ、その康太は方々で高砂を穢した。囁いた花嫁はといえば花婿に時折襟首を捕まれては里へ里へと続くそのくねくねと曲がり折り畳まれればいいのにという道を往復した。犬は? 犬は康太と同じテーブルに席があった。何度も花嫁からの着信を気にしながら。康太は犬の高砂も穢した。

犬嗅ぎ
花嫁跨ぎ
露だくマタギぞ股木
ひたすらに
身盛る
河内

大和の花婿、大和の花嫁を高砂めて、生駒山(大和河ではなく)を夜な夜な越えて、河内の花嫁を夜這う。大和の花嫁、前栽から花婿の無事の勃起を想い濡れ、河内の花嫁、前戯から花婿の無為の勃起を想い濡れ、食い太り、花婿、イコまヤマ(イテコマスではなく)を跨り、大淀河。

犬婿肥やして喰う花嫁
高砂 高砂
辺りは河内
百済

河内、大和、淀殿の高砂、高砂、馬面花嫁罵倒観音、昼時のメロドラマ犬じみて即電話に及ばず大跨ぎ開闢ビーチバレー花嫁マッチポイント

花婿は露しとど

初め花嫁が犬だと思っていたが、花婿が犬だった。花嫁は年々容貌衰えいつしか衣裳も脱ぎ捨て、犬は凄惨に肥え太ってゆき、張子の虎のようにしか歩かなくなり、河川敷には花嫁しか来なくなり、花嫁と犬はハレのビーチでその姿を撮影されたのが揃いの最後になった。その絵葉書が届いたので、神話となった。

ようやっとそこが河川敷
から花嫁に花嫁に
犬のように声出し
花嫁に
花嫁跨ぎ
高砂まさぐり
陽はまた昇るのです
犬を連れた花婿花嫁に花嫁に
花嫁衣装ごとまぐわいまぐわいたい
雨天は河川敷にはいかない
ハレのビーチはない
だからゲートボール
花嫁の高砂を大股ぎそして

そこが河内


詩誌情報

「酒乱」4号より抜粋




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